「年収が高い都市ほどお金が残る」は本当か——52都市の実データで確かめる
転職先を年収で選ぶと、手元に残る金額では負けることがあります。本サイトが比較する52都市で看護師の想定年収が最も高い東京23区は、家賃と生活費を引いた「毎月残るお金」では52都市中22位。この記事では、順位が入れ替わる仕組みを、公的統計にもとづく実数で費目ごとに分解します。
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- 看護師の移住マネーガイド 運営部
結論: 想定年収が最も高い都市は「残るお金」では22位だった
本サイトが比較している全国52都市(都道府県庁所在市・政令指定都市)のうち、看護師の想定年収が最も高いのは東京23区の569.0万円です。一方、その手取りから家賃・生活費を引いて毎月手元に残る金額を計算すると、東京23区は12.3万円で22位まで下がります。
逆の動きをする都市もあります。浜松市の想定年収は521.7万円で年収順位は14位ですが、残るお金は15.7万円で3位です。年収では東京23区に47.3万円負けているのに、毎月の残高では3.5万円勝っている——この逆転が、なぜ起きるのかを分解します。
| 都市 | 想定年収 | 年収順位 | 残るお金(月) | 残るお金の順位 |
|---|---|---|---|---|
| 東京23区 | 569.0万円 | 1位 | 122,558円 | 22位 |
| 京都市 | 564.0万円 | 2位 | 157,921円 | 2位 |
| 堺市 | 559.8万円 | 4位 | 163,056円 | 1位 |
| 横浜市 | 546.3万円 | 5位 | 135,483円 | 14位 |
| 浜松市 | 521.7万円 | 14位 | 157,388円 | 3位 |
| 福岡市 | 472.0万円 | 42位 | 115,491円 | 32位 |
| 鹿児島市 | 426.9万円 | 52位 | 63,885円 | 52位 |
順位が入れ替わる理由は、額面から遠い費目ほど都市差が大きいこと
額面年収から手元に残る金額までの間には、大きく3つの段階があります。それぞれで都市による差の付き方がまったく違うため、最終的な順位が入れ替わります。
残るお金 = 月の手取り − 家賃 − 基礎生活費 × 物価指数 ÷ 100 − 車の維持費
基礎生活費は家計調査の単身勤労者世帯の消費支出から住居費と自動車等関係費を除いた月15.0万円。物価指数は「家賃を除く総合」(全国=100)。車維持費は車が必要と判定した都市のみ月3.0万円を控除します。
① 額面 → 手取り: 差は縮む
税と社会保険料は累進的に働くため、額面の差は手取りの段階で必ず縮みます。東京23区(569.0万円)と浜松市(521.7万円)の年収差は47.3万円ですが、月の手取りで見ると366,794円と338,765円で、差は28,029円。年額に直すと約33.6万円で、額面差の7割程度まで縮んでいます。
② 家賃: 差はまったく縮まない
家賃は税や社会保険と違い、緩和する仕組みがありません。東京23区の平均家賃は90,336円、浜松市は33,327円で、差は57,009円。これは手取りの差28,029円のちょうど2倍で、この時点で逆転が確定します。
③ 生活費: 差は小さい
家賃を除く物価の地域差は、実は思ったほど大きくありません。指数の最高は横浜市の103.3、最低は鹿児島市の97.1で、幅は6ポイント程度。月15.0万円の基礎生活費に掛けても、上下の差は月1万円弱です。東京23区(102.6)と浜松市(98.7)の差は月5,850円にとどまります。
つまり、都市選びで最も効くのは家賃です。手取りの差を家賃の差が上回った瞬間に順位はひっくり返り、生活費の差はそれを微調整するだけです。
東京23区と浜松市を1円単位で並べる
実際の数字を並べると、どこで差が付いたかが一目でわかります。
| 費目 | 東京23区 | 浜松市 | 浜松市が有利な額 |
|---|---|---|---|
| 月の手取り | 366,794円 | 338,765円 | −28,029円 |
| 家賃 | 90,336円 | 33,327円 | +57,009円 |
| 基礎生活費(物価調整後) | 153,900円 | 148,050円 | +5,850円 |
| 車の維持費 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 毎月残るお金 | 122,558円 | 157,388円 | +34,830円 |
浜松市は手取りで月28,029円負けていますが、家賃で57,009円、生活費で5,850円勝つため、差し引き月34,830円の黒字になります。年額では417,960円です。5年勤めれば200万円を超える差になります。
「地方に行けば残る」とも限らない——車が効く30都市
家賃が安いから地方が有利、と単純化はできません。本サイトが比較する52都市のうち30都市は、世帯当たりの乗用車保有台数と自家用車通勤率から「車が必要」と判定しています。車が必要な都市では、月3.0万円の維持費が家賃の安さを打ち消します。
残るお金が最下位の鹿児島市を見ると、家賃は41,064円で東京23区の半分以下です。それでも残るお金は63,885円にとどまり、東京23区(122,558円)の約半分。想定年収が426.9万円と52都市中最も低いことに加え、車の維持費3.0万円が効いています。
| 都市 | 家賃 | 車の維持費 | 想定年収 | 残るお金(月) |
|---|---|---|---|---|
| 鹿児島市 | 41,064円 | 30,000円 | 426.9万円 | 63,885円 |
| 宮崎市 | 33,409円 | 30,000円 | 433.7万円 | 73,667円 |
| 青森市 | 33,618円 | 30,000円 | 471.3万円 | 96,582円 |
| 浜松市 | 33,327円 | 0円 | 521.7万円 | 157,388円 |
浜松市と宮崎市はほぼ同じ家賃ですが、残るお金は約8.4万円違います。内訳は年収差(月換算で約5.3万円の手取り差)と車の維持費3.0万円です。家賃だけを見て地方を選ぶと、この2つを見落とします。
逆に、すでに車を所有していて維持費が生活の前提になっている人、あるいは職場の駐車場が無料で通勤距離が短い人は、この3.0万円の一部を差し引いて考えてよいことになります。前提が自分に当てはまるかどうかを必ず確認してください。
自分の条件に引き直す手順
この試算はあくまで標準条件の概算です。実際の判断に使うには、次の順で自分の数字に置き換えてください。
- 候補都市の想定年収を、実際に応募する求人の提示額に差し替える。統計値は賃金構造基本統計調査の都道府県平均で、市単位でも個別の病院の値でもありません。本サイトは病院ごとの給与データを持っていないため、この差は求人票で確認してください。
- 家賃を、実際に住みたいエリア・間取りの募集家賃に差し替える。統計の平均家賃は継続入居を含むため、募集家賃より低く出ます。
- 車が必要かどうかを、通勤経路と職場の駐車場条件で判断する。すでに所有しているかどうかでも扱いが変わります。
- 生活費は自分の直近3か月の平均支出を使う。基礎生活費15.0万円は全国平均であり、個人差が最も大きい費目です。
- 残った金額を12倍し、転職や引っ越しの初期費用(敷金・礼金・引越代・家具家電)を回収するのに何か月かかるかを確認する。
5番目が特に重要です。月3万円の差は年36万円ですが、県外への引っ越し初期費用は50万円を超えることも珍しくありません。差額で初期費用を回収する期間を見てから、その都市に何年住むつもりかと突き合わせてください。
よくある質問
- 年収が高い都市を選ぶのは間違いですか?
- 間違いではありませんが、年収だけでは判断できません。額面の差は税と社会保険で縮み、家賃の差は縮まないためです。東京23区は想定年収が52都市中1位ですが、家賃90,336円が効いて残るお金は22位になります。年収と家賃の両方を見て、差し引きで判断してください。
- 「残るお金」にはどこまで含まれていますか?
- 月の手取りから、都市別の平均家賃、物価指数で調整した基礎生活費(月15.0万円が基準)、車が必要な都市では維持費(月3.0万円)を引いた金額です。貯蓄・娯楽・交際費・帰省費用などはこの残額の中から支出することになります。奨学金返済や仕送りがある場合は、さらにそこから引いて考えてください。
- 地方に移住すれば必ずお金は残りますか?
- 残るとは限りません。52都市のうち30都市は車が必要と判定しており、月3.0万円の維持費が家賃の安さを相殺します。鹿児島市は家賃が東京23区の半分以下でも、想定年収の低さと車の維持費により、残るお金は52都市中最下位の63,885円です。家賃・年収・車の3つをセットで見てください。
この記事で使った出典
- 賃金構造基本統計調査 令和6年 第3表(職種(特掲)・都道府県別) / 厚生労働省 / 2024年 / 取得日 2026年7月3日
- 小売物価統計調査(動向編)民営家賃(1か月3.3㎡当たり) / 総務省統計局 / 2026年 / 取得日 2026年7月3日
- 消費者物価地域差指数(小売物価統計調査 構造編)2024年結果 家賃を除く総合 / 総務省統計局 / 2024年 / 取得日 2026年7月3日
- 家計調査(家計収支編)単身世帯のうち勤労者世帯 1か月平均消費支出 / 総務省統計局 / 2024年 / 取得日 2026年7月3日
- 自家用車維持費の標準値(軽〜コンパクト・駐車場込み・車両減価償却を除く月額目安) / 日本自動車工業会 乗用車市場動向調査ほか / 2024年 / 取得日 2026年7月3日