本文へスキップ
看護師の移住マネーガイド
手順・チェックリスト

転職エージェントに相談する前に、自分で確かめておきたい7つの数字

転職エージェントに相談する前に7つの数字を押さえておくと、提示された条件が相場のどのあたりにあるかを、その場で自分で判定できます。候補地の想定年収、今の手取り月額、候補地の家賃相場、車の要否、看護職の有効求人倍率、通勤圏内の病院数、引っ越し初期費用の総額。この記事では全国52都市の実データを使い、7つそれぞれの調べ方と、都市によってどこまで振れるかを示します。

公開
最終更新
読了目安
17
執筆
看護師の移住マネーガイド 運営部

結論: 面談前に紙1枚へ書き出しておく7つの数字

転職エージェントとの面談前に、7つの数字を紙1枚に書き出しておいてください。6つは公的統計と自分の給与明細から取れ、残る1つは見積もりで確定させます。これがあると、提示された条件が相場のどのあたりにあるかを、相手の説明を待たずに自分で判定できます。

数字を持たずに面談へ行くと、提示年収が高いのか低いのか、家賃を引いて手元にいくら残るのかを、相手の説明だけで判断することになります。エージェントは求人側の内部情報を持っていますが、あなたの現在の手取りも、候補地で必要になる車の維持費も知りません。7つの数字は、この情報量の差を埋めるためのものです。

面談前に確かめる7つの数字と、本サイトが比較している全国52都市(都道府県庁所在市・政令指定都市)での振れ幅
番号確かめる数字どこで調べるか52都市での幅
1候補地の看護師の想定年収賃金構造基本統計調査の都道府県値426.9万円〜569.0万円
2今の自分の手取り月額直近の給与明細(額面から社会保険料と税を引いた額)試算では280,599円〜366,794円
3候補地の平均家賃小売物価統計調査の民営家賃(単身30㎡想定に換算)31,064円〜90,336円
4候補地で車が要るか世帯当たり乗用車保有台数(都道府県値)と自家用車通勤率(市の値)52都市中30都市が「必要」
5候補地の看護職の有効求人倍率一般職業紹介状況(職業安定業務統計)の都道府県値1.34倍〜2.97倍
6通勤圏内の病院数医療情報ネットの病院・施設情報10病院〜393病院
7引っ越し初期費用の総額契約予定物件の募集条件と引越業者の見積もり統計値なし(自分で確定させる)

①想定年収と②今の手取り月額——比較の起点をそろえる

この節でわかるのは、候補地の年収水準をどの数字で押さえるかと、その額面が手取りになる段階でどれだけ目減りするかです。額面同士で比べても転職の損得は出ません。

① 候補地の想定年収——その県の看護師の平均を知る

賃金構造基本統計調査(令和6年)の都道府県値をもとにした看護師の想定年収は、52都市で最高が東京23区の569.0万円、最低が鹿児島市の426.9万円です。差は142.1万円。提示された年収がこの幅のどこに位置するかを、まず確認します。

看護師の想定年収と52都市中の順位
都市想定年収順位
東京23区569.0万円1位
京都市564.0万円2位
名古屋市542.0万円9位
浜松市521.7万円14位
高知市490.0万円36位
佐賀市464.8万円47位
鹿児島市426.9万円52位
出典: 賃金構造基本統計調査 令和6年 第3表(職種(特掲)・都道府県別) 2024

② 今の自分の手取り月額——ここが比較の基準になる

転職の損得は額面ではなく手取りで決まります。標準条件の試算では、東京23区の想定年収569.0万円は月の額面474,167円に対して手取り366,794円。毎月およそ107,000円が引かれ、年間の控除合計は1,288,462円で額面の22.6%にあたります。

手取りの計算

手取り = 額面 − 社会保険料 − 所得税 − 住民税

東京23区・想定年収569.0万円の場合、社会保険料は年835,862円(うち厚生年金520,635円、健康保険280,233円、雇用保険28,450円、子ども・子育て支援金6,544円)、所得税165,500円、住民税287,100円。厚生年金と健康保険は労使折半で、給与明細に載るのは本人負担分です。

額面と手取りの差(標準条件・40歳未満・扶養なしの試算)
都市額面(月)手取り(月)引かれる額(月)年間の控除率
東京23区474,167円366,794円107,373円22.6%
名古屋市451,667円351,086円100,581円22.3%
浜松市434,750円338,765円95,985円22.1%
高知市408,292円318,938円89,354円21.9%
鹿児島市355,758円280,599円75,159円21.1%
出典: 協会けんぽ 令和8年度 都道府県単位保険料率(令和8年3月分から) 2026

おおむね額面が高い都市ほど控除率も高くなります(都道府県別の健康保険料率や市ごとの住民税の税率で前後することがあり、額面の大小だけでは決まりません)。東京23区と鹿児島市の額面年収差は142.1万円ですが、月の手取り差は86,195円、年額に直すと1,034,340円。額面差の72.8%まで縮みます。「年収が100万円上がる」という説明を聞いたら、手元に増えるのは70万円台だと読み替えてください。

自分の今の手取り月額は給与明細に書いてあります。候補地の想定年収から出した手取り試算と、この実額を並べる。ここが7つの数字の中で唯一、統計ではなく自分の実データを使う項目です。

③家賃相場と④車の要否——手取りの差を飲み込む2つの固定費

この節でわかるのは、手取りの差がどの費目で打ち消されるかです。家賃と車は税や社会保険と違い、都市差を緩和する仕組みがありません。

③ 候補地の家賃相場

52都市の平均家賃(単身30㎡想定)は、最安が佐賀市の31,064円、最高が東京23区の90,336円。差は月59,272円、年711,264円です。前節で見た東京23区と鹿児島市の年間手取り差1,034,340円に迫る大きさになります。

月の手取りから平均家賃を引いた額
都市平均家賃(月)手取り(月)手取り − 家賃
東京23区90,336円366,794円276,458円
川崎市67,309円352,944円285,635円
名古屋市46,927円351,086円304,159円
浜松市33,327円338,765円305,438円
佐賀市31,064円303,687円272,623円
出典: 小売物価統計調査(動向編)民営家賃(1か月3.3㎡当たり) 2026

手取りでは東京23区が52都市中1位ですが、家賃を引いた時点で浜松市に月28,980円抜かれます。年収と家賃はセットで見ないと順序が逆に見えます。

④ 候補地で車が要るかどうか

52都市のうち30都市は、世帯当たり乗用車保有台数と自家用車通勤率から「車が必要」と判定しています。車が不要と判定できたのは東京23区と大阪市の2都市だけで、残る20都市は「あると便利」です。必要な都市では月3.0万円、年36.0万円の維持費を家計に組み込む前提になります。

  • 燃料代の目安が月約7,000円
  • 任意保険料の目安が月約5,000円
  • 自動車税・重量税・自賠責保険の月割が約4,000円
  • 車検・整備・タイヤ交換の月割が約6,000円
  • 駐車場代(地方相場)が月約8,000円

この5項目の合計が月3.0万円です。車両本体の購入費と減価償却は含んでいません。すでに車を所有していて維持費が今の生活費に入っている人は、この金額の一部を差し引いて考えられます。

家賃が安くても残らない都市の例
都市平均家賃(月)車の判定毎月残るお金残るお金の順位
佐賀市31,064円必要94,723円46位
高知市37,727円必要100,161円41位
浜松市33,327円あると便利157,388円3位
東京23区90,336円不要122,558円22位
出典: 自家用車維持費の標準値(軽〜コンパクト・駐車場込み・車両減価償却を除く月額目安) 2024

佐賀市の平均家賃31,064円は52都市で最も安いのに、毎月残るお金は94,723円で46位です。想定年収464.8万円(47位)と車の維持費3.0万円が効いています。家賃の安さだけで候補地を決めると、この2つを見落とします。

  • 職場に駐車場があるか、あるなら月いくらかを求人票か面談で確認する
  • 夜勤明けや深夜入りの時間帯に使える公共交通があるかを、時刻表で確認する
  • すでに車を所有している場合、転居後に維持費がいくら変わるかを見積もる
  • 住むエリアを駅の近くに限定した場合、家賃が平均よりどれだけ上がるかを調べる

⑤有効求人倍率と⑥病院数——交渉の余地と選択肢の数

この節でわかるのは、その土地で看護職の需給がどちら向きか、そして1つ目の職場が合わなかったときに同じ街で次を探せるかです。どちらもお金の話ではなく、選択肢の話をしています。

⑤ 候補地の看護職の有効求人倍率

有効求人倍率は、ハローワークに出ている求人数を求職者数で割った値です。1.0倍を超えていれば求職者1人あたり1件以上の求人がある状態を意味します。看護職の都道府県別の値を都市に当てはめると、最高は名古屋市(愛知県)の2.97倍、最低は高知市(高知県)の1.34倍。52都市のうち31都市が2.0倍以上です。

看護職の有効求人倍率と、毎月残るお金の順位
都市有効求人倍率倍率の順位毎月残るお金残るお金の順位
名古屋市2.97倍1位155,509円5位
水戸市2.73倍2位113,952円33位
浜松市2.51倍6位157,388円3位
東京23区2.34倍13位122,558円22位
札幌市1.48倍51位139,289円12位
高知市1.34倍52位100,161円41位
出典: 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)雇用関係指標(年度)第4表・第5表(都道府県別・雇用形態別・職業(中分類)別 有効求人数/有効求職者数)令和6年度 2024

求人倍率と残るお金は連動しません。名古屋市は倍率1位で残るお金も5位ですが、水戸市は倍率2位でも残るお金は33位。札幌市は倍率51位でも残るお金は12位です。2つは別々の指標として扱ってください。

⑥ 通勤圏内の病院数

1つ目の職場が合わなかったとき、引っ越さずに次を探せるかどうかは、通える範囲にある病院の数で決まります。この数字は実数と人口あたりの密度で見え方が逆になるため、両方を確認してください。

病院数の実数と、人口10万人あたりの密度
都市病院数人口人口10万人あたり密度の順位
東京23区3939,733,276人4.0445位
札幌市1511,973,395人7.6520位
高知市59326,545人18.071位
川崎市381,538,262人2.4752位
那覇市10317,625人3.1550位
出典: 医療情報ネット オープンデータ 病院・施設情報(2025年12月1日時点版・PDL1.0) 2025

高知市の病院数59は東京23区の393の6分の1以下ですが、人口10万人あたりでは18.07で52都市中1位、東京23区の4.04の4.5倍近くあります。人口の多い都市は病院数の絶対値が大きくても、その病院を利用する人も多いという当たり前の構図です。

どちらが自分に効くかは通勤手段で決まります。車を使わず通う人には、住むエリアから実際に通える病院の実数が効きます。密度は街全体としての選択肢の多さを示しますが、面積の広い都市では病院が散っているため、通える数は密度ほど多くなりません。

⑦引っ越し初期費用——唯一、統計では出せない数字

7つめは公的統計に答えがありません。初期費用は契約する物件と依頼する業者で決まるため、平均値を当てにせず実額を確定させます。逆に言えば、面談前に見積もりを取っておけば、候補地の比較に確定した数字を1つ持ち込めることになります。

初期費用の総額

初期費用 = 契約物件の家賃 × 募集条件に書かれた月数 + 引越運賃 + 家具家電の購入費 + 転居に伴う諸費用

「募集条件に書かれた月数」は敷金・礼金・前家賃・仲介手数料などの合計月数です。物件ごとに違うので、募集情報をそのまま読んで確定させます。ここに平均値や相場の月数を代入しないでください。

総額が出たら、転職で毎月増える金額で割ります。何か月で元が取れるかがわかり、その都市に何年住むつもりかと突き合わせられます。

初期費用の回収期間

回収にかかる月数 =(初期費用の総額 − 受け取れる移住支援金)÷ 毎月残るお金の増加額

毎月残るお金の増加額は、候補地の残るお金から現在地の残るお金を引いた値です。マイナスになる組み合わせでは、この式は成立しません。

たとえば東京23区から浜松市へ移る場合、標準条件での毎月残るお金は122,558円から157,388円に増え、差は月34,830円、年417,960円です。移住支援金は52都市中36都市が対象で、うち33都市は東京圏からの移住かつ単身の場合に60万円。浜松市もこの33都市に入り、60万円は月34,830円のおよそ17.2か月分にあたります。ただし残る3都市は市が独自に低い額を設定しており、和歌山市は単身20万円、大分市は単身40万円、高松市は基本額が単身50万円です。金額は「対象なら一律60万円」ではないため、候補地ごとに必ず確認してください。

移住支援金の対象都市の例(東京圏からの移住・単身の場合)
都市単身での支給額毎月残るお金東京23区との差(月)
浜松市600,000円157,388円+34,830円
名古屋市600,000円155,509円+32,951円
岡山市600,000円133,455円+10,897円
高知市600,000円100,161円−22,397円
出典: 地方創生 移住支援金(地方創生移住支援事業。新規採録都市の個別調査までの参照用) 2026

高知市のように、移った先で残るお金が減る組み合わせもあります。この場合は回収という考え方が成立しません。それでも移るなら、判断材料はお金以外にあるはずです。高知市は人口10万人あたりの病院数18.07で52都市中1位、街の中での職場の選択肢は多い。数字は決断を代行しませんが、何を天秤にかけているのかをはっきりさせます。

7つの数字を持って面談に臨むと、何が変わるか

7つが手元にあると、面談の場で次の3つを自分で判定できます。相手の説明を待たずに済むぶん、面談の時間を統計では取れない情報に回せます。

  1. 提示された年収が、その県の統計平均からどれだけ離れているか。離れているなら、夜勤回数・住宅手当・賞与の支給月数・退職金制度のどれで説明が付くのかを聞く。
  2. 提示条件で毎月いくら残るか。提示年収から手取りを見積もり、候補地の平均家賃と車の要否を引いて、今の手取り月額と並べる。
  3. その転職の初期費用を何か月で回収できるか。回収期間が想定している滞在年数を超えるなら、条件面の交渉か候補地の見直しが要る。

この3つを自分の言葉で言えると、質問の形が変わります。「この条件はどうですか」ではなく、「提示額は県平均を下回っていますが、住宅手当と夜勤回数で埋まりますか」と聞けるようになります。前者は相手に評価を委ねる質問、後者は相手が持っている情報を引き出す質問です。

よくある質問

転職エージェントに相談する前に、何を準備しておけばいいですか?
7つの数字を紙1枚に書き出しておいてください。候補地の想定年収、今の自分の手取り月額、候補地の平均家賃、車の要否、候補地の看護職の有効求人倍率、通勤圏内の病院数、引っ越し初期費用の総額です。前の6つは公的統計と給与明細から取れます。7つめだけは統計値がないので、物件の募集条件と引越業者の見積もりで確定させます。これがあると、提示条件が相場のどのあたりかをその場で判定できます。
提示された年収が統計の平均より低かったら、断るべきですか?
平均を下回っていること自体は断る理由になりません。賃金構造基本統計調査の値は都道府県単位で、経験年数も勤務形態も混ざった平均だからです。同じ市内でも病院ごとに差が出ます。確かめるべきなのは差額の理由です。夜勤回数、住宅手当、賞与の支給月数、退職金制度で説明が付くかを聞いてください。それでも説明が付かないなら、そこが交渉材料になります。
年収が100万円上がる転職なら、手取りも100万円増えますか?
増えません。標準条件(40歳未満・扶養なし)の試算では、想定年収569.0万円の東京23区と426.9万円の鹿児島市の差は142.1万円ですが、月の手取り差は86,195円、年額では1,034,340円です。額面差の72.8%にとどまります。額面が上がるほど社会保険料と税の控除率も上がるためで、東京23区の控除率は22.6%、鹿児島市は21.1%です。
家賃の安い地方に移れば、その分だけ手元に残りますか?
残るとは限りません。52都市のうち30都市は車が必要と判定されており、月3.0万円、年36.0万円の維持費がかかります。佐賀市は平均家賃31,064円で52都市中最も安い水準ですが、想定年収464.8万円と車の維持費が効いて、毎月残るお金は94,723円で46位です。家賃・年収・車の3つをセットで見てください。

この記事で使った出典