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看護師の移住マネーガイド
お金・手取り

同じ年収でも住む県で手取りが変わる——協会けんぽの都道府県別保険料率を実額で比較する

健康保険料は全国一律ではありません。協会けんぽの料率は都道府県ごとに決められており、本人負担で最も低い新潟県は4.605%、最も高い佐賀県は5.275%です。年収510.0万円なら年34,170円、月2,848円の差になります。ただしこの額は、家賃の都市間格差(東京23区と佐賀市で年711,264円)の20分の1程度でしかありません。実額で確かめたうえで、都市選びのどこに置くべきかを整理します。

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看護師の移住マネーガイド 運営部

結論: 県による保険料率の差は年34,170円。無視はできないが決定要因ではない

協会けんぽ(全国健康保険協会)の健康保険料率は、都道府県ごとに別々の値が決められています。労使折半したあとの本人負担率で見ると、最も低いのは新潟県の4.605%、最も高いのは佐賀県の5.275%で、その差は0.67ポイントです。厚生年金や雇用保険と違い、健康保険だけが住む場所(正確には勤務先が届け出ている支部)によって変わります。

実額に直します。本サイトが比較している全国52都市の想定年収は、中央値が509.1万円、平均が504.5万円です。ほぼ中央にあたる510.0万円(広島市と山口市の想定年収)を基準にすると、新潟県なら年234,855円、佐賀県なら年269,025円。差は年34,170円、月にして2,848円です。

年間の健康保険料(本人負担分)

年間の健康保険料 = 年収 × 都道府県別の保険料率(本人負担分)

協会けんぽが公表している料率は労使合計の値です。本記事の「本人負担」はその半分。新潟県は総額9.21%で本人負担4.605%、佐賀県は総額10.55%で本人負担5.275%になります。

年収510.0万円のときの年間健康保険料(本人負担分・40歳未満)
都道府県本人負担率労使合計の料率年間保険料月額換算
新潟県(最低)4.605%9.21%234,855円19,571円
佐賀県(最高)5.275%10.55%269,025円22,419円
0.67ポイント1.34ポイント34,170円2,848円
出典: 協会けんぽ 令和8年度 都道府県単位保険料率(令和8年3月分から) 2026

年34,170円は月あたり2,848円で、本サイトが生活費の基準に使う標準生活費150,000円/月(家計調査の単身勤労者世帯の消費支出から家賃と車の維持費を除いた目安値)と比べると、年額で約23%、月額では約1.9%にあたります。転職先を最後の2択まで絞った段階なら、判断材料に入れる価値はあります。一方で、同じ52都市の家賃を比べると東京23区の90,336円と佐賀市の31,064円の間に月59,272円、年711,264円の差があります。保険料率の差は家賃差の約4.8%にすぎません。都市を選ぶ順番としては、家賃と年収を先に見て、保険料率は最後の微調整に使うのが妥当です。

給与から引かれる社会保険料のうち、県で変わるのは健康保険だけ

この節を読むと、県による差が社会保険料全体のどこに、どれだけ効いているかがわかります。結論を先に書くと、県で変わるのは健康保険料だけで、それは社会保険料合計の3分の1です。残る3分の2は全国どこでも同じ料率です。

年収510.0万円・広島市の社会保険料内訳(本人負担分・40歳未満)。行ごとの出典: 厚生年金保険=日本年金機構、健康保険=協会けんぽ、雇用保険=厚生労働省、子ども・子育て支援金=協会けんぽ。年間額は本サイトが料率から計算した試算値
項目本人負担率年間額地域差
厚生年金保険9.15%466,650円全国一律
健康保険(協会けんぽ・広島県)4.890%249,390円都道府県別
雇用保険0.5%25,500円全国一律
子ども・子育て支援金0.115%5,865円全国一律
合計14.655%747,405円
出典: 日本年金機構 厚生年金保険の保険料(保険料率18.300%・労使折半で労働者負担9.15%) 2026

全国一律の3項目を足すと498,015円で、これは住む県が変わっても1円も動きません。動くのは健康保険の249,390円の部分だけで、社会保険料合計747,405円に占める割合は33.4%です。さらにそのうち県によって上下するのは料率0.67ポイント分にとどまります。

なぜ県ごとに料率が違うのか

協会けんぽの料率は、支部(原則として都道府県単位)ごとの加入者一人当たり医療費の水準を反映して、毎年度決められます。加入者の年齢構成や所得水準の違いは全国で調整されたうえで、それでも残る医療費の地域差が料率に表れる仕組みです。つまり料率の高い県は、その地域の医療費水準が相対的に高いことを意味します。転職者にとっては自分で選べる要素ではなく、勤務先の所在地によって自動的に決まります。

料率が低い5県と高い5県

本人負担率が低い5県(年収510.0万円のときの年間保険料)
都道府県本人負担率労使合計の料率年間保険料新潟県との差
新潟県4.605%9.21%234,855円
沖縄県4.720%9.44%240,720円+5,865円
福島県4.750%9.50%242,250円+7,395円
岩手県4.755%9.51%242,505円+7,650円
茨城県4.760%9.52%242,760円+7,905円
出典: 協会けんぽ 令和8年度 都道府県単位保険料率(令和8年3月分から) 2026
本人負担率が高い上位5水準(年収510.0万円のときの年間保険料)
都道府県本人負担率労使合計の料率年間保険料新潟県との差
佐賀県5.275%10.55%269,025円+34,170円
北海道5.140%10.28%262,140円+27,285円
徳島県5.120%10.24%261,120円+26,265円
山口県5.075%10.15%258,825円+23,970円
鹿児島県・大阪府5.065%10.13%258,315円+23,460円
出典: 協会けんぽ 令和8年度 都道府県単位保険料率(令和8年3月分から) 2026

低いほうの5県は新潟県を除けば互いに0.04ポイント以内に固まっており、新潟県との差も年8,000円未満です。高いほうは佐賀県だけが突出していて、2位の北海道との差だけで年6,885円あります。つまり「料率で得をする県」を探すよりも、「佐賀県・北海道は他県よりやや高い」と押さえるほうが実用的です。

同じ年収の2都市で検証する——広島市と山口市

この節では、想定年収が完全に一致する2都市を並べて、料率差が手取りにどう表れるかを1円単位で確かめます。52都市の中で、県が違うのに想定年収が同額なのは広島市と山口市の組み合わせだけです。どちらも510.0万円で、料率は広島県が4.890%、山口県が5.075%です。

広島市と山口市の年間比較(想定年収はどちらも510.0万円・40歳未満・扶養なし)。差の列は山口市の値から広島市の値を引いた符号付きの数字。行ごとの出典: 健康保険料率=協会けんぽ、所得税=国税庁の速算表、住民税=各自治体の税率・均等割。金額はいずれも本サイトの試算値
項目広島市山口市差(山口市−広島市)
健康保険料率(本人負担)4.890%5.075%+0.185ポイント
年間の健康保険料249,390円258,825円+9,435円
年間の所得税126,200円125,300円−900円
年間の住民税249,200円248,300円−900円
年間の手取り3,977,195円3,969,560円−7,635円
月の手取り331,432円330,796円−636円
出典: 協会けんぽ 令和8年度 都道府県単位保険料率(令和8年3月分から) 2026

注目すべきは、山口市の健康保険料が広島市より9,435円多いのに、年間手取りの減り方は7,635円にとどまっている点です。差の1,800円は、所得税が900円、住民税が900円それぞれ安くなったぶんです。社会保険料は全額が社会保険料控除の対象になるため、保険料を多く払うほど課税所得が下がり、税が減ります。

保険料の差が手取りに与える実質的な影響

手取りの減少額 = 保険料の増加額 − 所得税の減少額 − 住民税の減少額

広島市と山口市の場合は 9,435円 − 900円 − 900円 = 7,635円。山口市の手取りは広島市より年7,635円少なく、保険料差の約19%が税の減少で戻っています。

この「約19%戻る」という関係は、記事冒頭の新潟県と佐賀県の比較にも同じように働きます。年34,170円という保険料差は額面上の数字で、手取りベースの実質差はこれより小さくなります。保険料率の差を語るときに、税の戻りを無視して額面の差だけを示すと過大評価になります。

家賃差と並べると、保険料率差の重みが見える

保険料率を過大評価しないために、都市選びで動く他の金額と同じ単位(年額)で並べます。結論として、健康保険料率の県間差は、家賃差の20分の1、年収差の40分の1程度の規模です。

52都市の比較で動く金額(年額・標準条件)。行ごとの出典: 想定年収=賃金構造基本統計調査、家賃=小売物価統計調査(動向編)民営家賃、健康保険料=協会けんぽ、住民税の均等割=総務省「超過課税の状況」。年間の最大差は本サイトの試算値
項目最小最大年間の最大差
想定年収426.9万円(鹿児島市)569.0万円(東京23区)1,420,900円
家賃31,064円/月(佐賀市)90,336円/月(東京23区)711,264円
健康保険料(年収510.0万円時)234,855円(新潟県)269,025円(佐賀県)34,170円
住民税の均等割5,000円6,200円1,200円
出典: 小売物価統計調査(動向編)民営家賃(1か月3.3㎡当たり) 2026

家賃の最大差711,264円は、保険料率の最大差34,170円の20.8倍です。年収の最大差1,420,900円はさらにその倍。都市を比較する順番は、年収、家賃、車の要否、そのあとに保険料率と住民税、という優先順位になります。

料率が最も高い佐賀県は、家賃が最も安い佐賀市を抱えている

料率と生活コストは連動しません。むしろ逆に動くことがあります。保険料率が全国で最も高い佐賀県にある佐賀市は、52都市で家賃が最も安い31,064円です。最も料率が低い新潟県の新潟市(36,055円)と比べると、家賃だけで月4,991円、年59,892円も佐賀市が安い。保険料率の差34,170円を、家賃差だけで25,722円上回ります。

ただし、これは「佐賀市のほうが有利」という結論にはなりません。実際の想定年収は佐賀市が464.79万円、新潟市が508.23万円で、43.44万円の開きがあります。毎月手元に残るお金は新潟市147,409円(52都市中9位)に対し佐賀市94,723円(46位)です。佐賀市は車が必要と判定される都市でもあります。保険料率も家賃も、単独では順位を決めません。

住民税も自治体で違う——均等割・超過課税・森林環境税

住民税にも自治体差があります。差が出るのは2か所、定額で課される均等割と、課税所得に率で課される所得割です。ただし、どちらも健康保険料率より差は小さく、均等割は最大でも年1,200円です。

均等割: 52都市で5,000円から6,200円

均等割は所得にかかわらず定額で課される部分です。上乗せのない標準は年5,000円で、52都市のうち札幌市・東京23区・新潟市・那覇市など10市がこの水準。最も高いのは6,200円の3市で、差は年1,200円、月換算100円です。同じ6,200円でも、上乗せの中身は市ごとに違います。

住民税均等割が最も高い3市と、その上乗せの内訳
都市均等割(年額)標準からの上乗せ上乗せの中身
仙台市6,200円+1,200円みやぎ環境税1,200円(県の超過課税)
横浜市6,200円+1,200円神奈川県水源環境税300円+横浜みどり税900円
神戸市6,200円+1,200円兵庫県の県民緑税800円+認知症神戸モデル400円
標準的な自治体5,000円上乗せなし
出典: 総務省 超過課税の状況(令和7年4月1日現在。個人均等割超過課税の実施37県・横浜市/神戸市の確認) 2025

均等割と一緒に徴収される森林環境税は国税で、全国どこでも同額です。したがって森林環境税そのものは自治体差を生みません。差を生むのは、県や市が独自に条例で設ける超過課税のほうです。総務省の調査では、個人住民税の均等割に超過課税を実施しているのは37県にのぼります。名称に「森林」「みどり」「水源」が付く税が多いため森林環境税と混同されやすいのですが、両者は別物です。

所得割: 52市中48市が10.0%

所得割の税率は、52都市のうち48市が標準の10.0%です。例外は2つ。名古屋市は市民税減税により9.7%と標準より低く、横浜市・川崎市・相模原市は神奈川県の水源環境税が所得割に0.025%上乗せされて10.025%です。最も低い名古屋市と最も高い神奈川県内3市の差は0.325ポイントで、健康保険料率の県間差0.67ポイントの半分以下にとどまります。

  • 名古屋市: 所得割9.7%(52都市で唯一標準を下回る)
  • 横浜市・川崎市・相模原市: 所得割10.025%(52都市で最も高い)
  • 上記4市以外の48市: 所得割10.0%

自分の条件に引き直す手順

ここまでの数字を実際の転職判断に使うには、次の順で確認してください。上から順に、手取りへの影響が大きい順に並べています。

  1. 求人票の提示年収と、住むエリアの募集家賃を先に固める。この2つで年間100万円規模の差が付くため、他をどれだけ精密に計算しても順位はここで決まります。
  2. 通勤に車が必要かを確認する。車が必要な都市では維持費が家賃の安さを打ち消し、その影響は保険料率差より1桁大きくなります。
  3. 応募先が加入する医療保険の種類を確認する。健康保険組合や共済組合なら、この記事の都道府県別料率は当てはまりません。
  4. 協会けんぽの場合は、勤務先が所属する支部の都道府県の料率を確認する。住民票の所在地ではなく勤務先の所在地で決まります。
  5. 最後の2択が同じくらいの条件になったときだけ、保険料率と住民税の均等割・所得割を比べる。年34,170円と年1,200円は、決め手ではなくタイブレークに使う数字です。

現在の給与明細があれば、自分に実際に適用されている料率はすぐ確認できます。健康保険料の月額を標準報酬月額で割れば本人負担率が出ます。転職先の県の料率と引き算し、想定年収を掛ければ、この記事と同じ計算を自分の数字で再現できます。

よくある質問

健康保険料は住んでいる県と勤務先の県のどちらで決まりますか?
勤務先が所属する協会けんぽ支部の都道府県で決まります。住民票の所在地ではありません。県境をまたいで通勤している場合、住んでいる県の料率ではなく職場のある県の料率が適用されます。逆に、住民税の均等割・所得割は住民票のある自治体で決まるため、両者は別々に確認する必要があります。
保険料率が低い県に転職すれば手取りは増えますか?
増えますが、額は限定的です。最も低い新潟県と最も高い佐賀県の差は本人負担で0.67ポイント、年収510.0万円なら年34,170円です。さらに社会保険料は全額が控除対象のため、保険料が減ると所得税と住民税は増えます。広島市と山口市の実データでは、保険料が年9,435円多い山口市の年間手取りは広島市より7,635円少なく、差の約19%が税で相殺されました。料率だけを理由に転職先を選ぶ根拠にはなりません。
40歳になると保険料はどのくらい増えますか?
介護保険料が上乗せされます。本人負担率は全国一律0.81%で、年収510.0万円なら年41,310円です。この額は都道府県による健康保険料率の最大差34,170円を上回ります。40歳の誕生日を迎える年に手取りが減った場合、原因は勤務地ではなく介護保険料である可能性が高いと考えられます。
住民税の森林環境税は自治体によって金額が違いますか?
森林環境税は国税で、全国どこでも同額です。自治体で違うのは、県や市が条例で独自に上乗せしている超過課税のほうです。みやぎ環境税、横浜みどり税、兵庫県の県民緑税などが該当し、52都市の均等割は5,000円から6,200円まで幅があります。差は年1,200円で、月に直すと100円です。

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